海外子会社や海外支店で働く外国人社員を、日本本社へ転勤させたいと考えている企業も多いのではないでしょうか。
このような場合、主に検討する在留資格は
・「企業内転勤」
・「技術・人文知識・国際業務(技人国)」
・「高度専門職」
になります。
これらはもITエンジニア、経理、企画、海外営業などの専門業務で利用できる在留資格なのですが、取得要件は異なります。
その上、2026年10月1日に改定された永住許可ガイドラインでは、2027年4月1日以降、企業内転勤での在留期間は永住で求められる就労期間に含まれないということが示されています。
外国人社員を日本に転勤させる際は、目先の在留資格取得だけでなく、本人の将来の在留計画も踏まえて検討することが重要なのです。
本記事では、企業の人事・法務担当者向けに、企業内転勤と技人国の違い、永住申請への影響、必要書類について解説します。
企業内転勤と技人国は何が違う?
まずは、2つの在留資格の主な違いを比較してみましょう。
| 比較項目 | 企業内転勤 | 技人国 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 海外拠点から日本への期間を定めた転勤 | 日本で専門業務に従事する外国人 |
| 海外勤務歴 | 原則1年以上の継続勤務が必要 | 学歴があれば1年以上の海外勤務は不要 |
| 学歴・職歴 | 独立した学歴要件なし | 原則として関連する学歴または実務経験等が必要 |
| 仕事内容 | 技人国に該当する専門業務 | 技人国に該当する専門業務 |
| 転勤期間 | 期間を定めた転勤が前提 | 同様の転勤期間要件なし |
| 報酬 | 日本人と同等額以上 | 日本人と同等額以上 |
| 永住申請への影響 | 2027年4月以降、原則として就労資格の5年間に算入されない | 引き続き就労資格の5年間に算入される |
※永住申請に関する比較は、原則10年の継続在留による申請を前提としています。高度人材等の特例については後述します。
大きな違いは、企業内転勤では海外での勤務実績が重要になる一方、技人国では本人の学歴・実務経験などが重視されることです。
また、海外からの転勤であっても、必ず企業内転勤の在留資格を取得しなければならないわけではありません。条件を満たせば、技人国で日本へ赴任することも可能です。
企業内転勤ビザの主な取得条件
企業内転勤は、海外の事業所で働く外国人社員が、期間を定めて日本の事業所へ転勤し、専門業務に従事するための在留資格です。
主な要件は以下のとおりです。
海外で1年以上の勤務実績があること
原則として、転勤直前に海外の事業所で1年以上継続して技人国に該当する業務に従事している必要があります。
例えば、
「海外子会社で2年間システムエンジニアとして勤務していた社員を、日本本社の開発部門へ転勤させる」
このような場合であればOKです。
ただし、単に1年以上在籍していればよいわけではなく、実際に担当していた仕事内容も確認されます。
日本と海外の事業所に所定の関係があること
対象となる転勤には、例えば次のようなものがあります。
- 海外支店から日本本社への転勤
- 海外本社から日本支店への転勤
- 海外子会社から日本親会社への出向
- 所定の資本関係等が認められる関連会社間の転勤
申請では、法人の登記資料や出資関係を示す資料などにより、両事業所の関係を説明する必要があります。
日本で専門業務(高度な業務)を行うこと
企業内転勤で認められる仕事内容は、基本的に技人国と同じ範囲です。
例えば、システム開発、設計、経理、マーケティング、海外営業などが対象となり得ます。
一方、単純な製造作業や倉庫内作業などを主な目的とする転勤は、原則として認められません。
また、日本人が同様の業務に従事する場合と同等額以上の報酬を受けることも必要です。
【重要】2027年4月から企業内転勤での永住申請が厳しくなる
今回、特に注意していただきたいのが、企業内転勤で日本に在留した期間と、将来的な永住申請の関係です。
2026年10月1日に改定された「永住許可に関するガイドライン」では、原則として10年以上の継続在留に加え、そのうち5年以上継続して在留することが求められる「就労資格」から、企業内転勤が除外されました。
この変更は、原則として2027年4月1日以降の永住許可申請から適用されます。
企業内転勤の在留期間は、永住申請でどう扱われる?
| 比較項目 | 2027年3月までの申請 | 2027年4月以降の申請 |
|---|---|---|
| 企業内転勤の期間と原則10年の在留歴 | 算入対象 | 引き続き算入対象 |
| 企業内転勤の期間と就労資格5年 | 算入対象 | 原則として算入対象外 |
| 技人国の期間と就労資格5年 | 算入対象 | 引き続き算入対象 |
つまり、企業内転勤だけで日本に長期間滞在していても、2027年4月以降の申請では、それだけで原則的な永住許可の在留年数要件を満たせなくなります。
ただし、原則10年以上の継続在留の計算には、引き続き含まれ得ます。
具体例で比較
ケース①:企業内転勤で日本に10年間在留
原則10年以上の継続在留という条件は満たします。
しかし、2027年4月以降の申請では、就労資格による5年以上の在留期間に算入されません。
→永住申請の在留期間の要件を満たしません。
ケース②:企業内転勤5年間+技人国5年間
原則10年以上の継続在留という条件を満たしています。
また、技人国で5年間働いているので就労資格による5年以上の在留期間も満たしています。
→永住申請の在留期間の要件を満たします。
ただし、海外出張や海外赴任が多い外国人社員については、出入国の履歴にも注意が必要です。
参考:出入国在留管理庁|永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)
企業内転勤と技人国、どちらを選ぶべき?
実際には、外国人社員の経歴、日本での仕事内容、赴任期間、将来の在留計画などを総合的に判断します。
ケース① 海外子会社で3年間勤務したエンジニアを2年間、日本本社に転勤させたい
企業内転勤を検討するケースです。
海外勤務1年以上という要件を満たしており、日本での仕事内容も専門業務に該当する場合、企業内転勤の要件を満たす可能性があります。そして、転勤の期間(終わり)も決まっています。
ケース② 海外子会社に入社して半年の社員を日本本社で勤務させたい
技人国を検討するケースです。
企業内転勤では原則1年以上の海外勤務実績が必要ですが、技人国には同様の要件がありません。
本人の学歴・実務経験、日本での契約関係などが要件を満たす場合には、技人国による受入れを検討できます。
なお、赴任期間を限定する場合などは、申請の前提となる契約・活動内容を慎重に確認する必要があります。
ケース③ 海外子会社の社員を日本本社で長期間雇用し、将来的な永住も視野に入れている
技人国を積極的に検討するケースです。
【2026年4月改正】企業内転勤の必要書類
2026年4月1日から、企業内転勤の申請における提出資料の取扱いが変更されています。
特に、海外での勤務実績や海外事業所の実在性を証明する資料が重要です。
主な提出資料
| 書類 | 確認される内容 |
|---|---|
| 転勤命令書・労働条件通知書等 | 転勤期間、仕事内容、地位、報酬 |
| 法人間の関係を証明する資料 | 海外事業所と日本事業所の関係 |
| 海外法人の登記資料等 | 海外事業所の実在性 |
| 在職証明書・社会保険加入証明等 | 海外での勤務期間・勤務実態 |
| 会社案内・事業概要等 | 日本側の事業内容 |
※実際の提出資料は、申請区分および所属機関のカテゴリーによって異なります。
企業内転勤でも技人国と同様に、受入機関はカテゴリー1〜4に区分されます。
上場企業などのカテゴリー1や、一定の条件を満たすカテゴリー2では、一部の企業関係資料が原則として省略されます。
一方、カテゴリー3・4では、海外事業所の実在性、勤務実績、法人関係などの詳細な資料が求められます。
大企業グループであっても、実際の受入法人がどのカテゴリーに該当するかを確認することが重要です。
海外から外国人社員を転勤させる手続きの流れ
海外の外国人社員を日本に転勤させる場合、一般的には次の流れで進めます。
| ステップ | 主な手続き |
|---|---|
| ① 在留資格の検討 | 企業内転勤・技人国等の適合性を確認 |
| ② 必要書類の準備 | 海外勤務実績、法人関係、仕事内容、雇用条件等を確認 |
| ③ COE申請 | 日本側で在留資格認定証明書交付申請 |
| ④ 査証申請 | COE交付後、本人が在外公館等で査証申請 |
| ⑤ 入国・勤務開始 | 適切な在留資格で入国し、日本での勤務を開始 |
特に企業内転勤では、海外事業所の登記資料や勤務実績に関する資料など、日本の人事部門だけでは準備できない書類があります。
そのため、日本本社と海外子会社の双方で担当者を決め、早い段階から準備することをおすすめします。
また、COEの有効期間は原則3か月です。交付後の査証申請や渡航日程にも注意が必要です。
企業内転勤についてよくある質問
Q1.企業内転勤は大学を卒業していなくても申請できますか?
はい。企業内転勤には技人国のような独立した学歴要件はありません。
ただし、原則として海外で1年以上継続して専門業務に従事していることなど、所定の要件を満たす必要があります。
Q2.給与を海外の親会社から支払っても問題ありませんか?
海外法人から給与が支払われることだけを理由に、企業内転勤が認められなくなるわけではありません。
ただし、日本人と同等額以上の報酬を受けることや、支払条件・支払実態を説明できることが重要です。
Q3.企業内転勤から技人国へ変更できますか?
はい。本人の学歴・実務経験、仕事内容、契約関係等が技人国の要件を満たす場合、在留資格変更許可申請を検討できます。
ただし、技人国へ変更したからといって、過去の企業内転勤の期間が遡って就労資格の5年間に算入されるわけではありません。
まとめ|海外からの転勤では将来の在留計画も重要
海外子会社や海外支店から外国人社員を日本へ転勤させる場合、企業内転勤と技人国のどちらも選択肢となり得ます。
判断に当たっては、次の5点を確認することが重要です。
- 海外事業所での勤務期間と仕事内容
- 日本と海外の法人関係
- 日本での業務内容と赴任期間
- 本人の学歴・実務経験
- 将来的な永住申請の希望
特に2027年4月以降の永住許可申請では、企業内転勤での在留期間が就労資格による5年間に算入されなくなるため、長期的な日本勤務を予定する外国人社員については、技人国などの在留資格も含めた検討が重要になります。
在留資格は、単に取得しやすいものを選ぶのではなく、本人の要件と企業の人事計画の両方に適したものを選択することが大切です。
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