はじめに

外国人を雇用する際に最も重要なのは、「その業務に適した在留資格を選ぶこと」です。誤ったビザで就労させた場合、不法就労助長罪に問われ、企業側も罰則を受ける可能性があります。

このマニュアルでは、外国人採用の現場で頻出する在留資格ごとに、特徴・条件・注意点をまとめています。

在留資格の分類

ここでは大きく分けて3つの分類の在留資格があります。

分類内容主な在留資格
就労系職種ごとに条件がある技人国、特定技能、技能実習など
身分系職種制限なし永住者、日本人の配偶者等、定住者など
特定活動系限定的な活動範囲留学生の就職活動など

各ビザ別の特徴と採用条件

技術・人文知識・国際業務(技人国)

  • 対象職種:営業、経理、IT、翻訳、マーケティングなど
  • 要件:大学・専門卒(学歴と業務内容の関連性)、日本人と同等の待遇
  • 注意点:単純作業は不可(レジ、接客など)

特定技能(1号)

  • 対象業種:外食、介護、建設、製造など12分野
  • 要件:分野別技能試験・日本語試験に合格 or 技能実習2号修了
  • 雇用形態:フルタイム、支援計画の実施義務あり
  • 注意点:分野外業務は不可、支援体制が必要(登録支援機関等)

技能実習

  • 対象業務:農業、縫製、機械加工などの実務訓練
  • 要件:技能移転を目的とした教育型雇用
  • 注意点:期間限定(最長5年)、監理団体との契約が必須

身分系在留資格(永住者/定住者/日本人の配偶者等)

  • 特徴:職種・業種・雇用形態に制限なし
  • 採用の自由度が高く、就労制限もなし
  • 注意点:在留カードの確認は必須(在留期限管理)

特定活動

  • 例:留学生の就職活動中、ワーキングホリデー、研究者など
  • 就労可能範囲:個別に許可される内容に限る
  • 注意点:活動内容に厳密な制限あり。採用前に確認必須

ざっくり早見表

業務内容該当する可能性のある在留資格備考
営業・マーケティング・企画技人国、身分系学歴との関連性要確認
経理・総務・人事などの事務職技人国、身分系文系学部卒が有利
システム開発・ITエンジニア技人国、身分系情報系学科卒が基本
翻訳・通訳技人国、身分系日本語+母語運用が必要
語学講師(英語・中国語など)技人国、身分系専門的指導経験あれば有利
外食業の接客・調理補助特定技能(外食)、身分系特定技能は試験合格必須
清掃・ホテルの客室整備特定技能(宿泊)、身分系身分系なら制限なし
介護補助・入浴介助特定技能(介護)、身分系介護職は追加研修要件あり
工場での製造ライン作業特定技能(製造)、技能実習、身分系技能実習は監理団体が必要
食品加工・惣菜製造特定技能(飲食料品製造)、技能実習単純作業可(特定技能1号)
建設作業員(とび・鉄筋など)特定技能(建設)、技能実習、身分系建設分野は多数職種あり
農作業(収穫・選別)特定技能(農業)、技能実習、身分系季節変動に対応できる
貿易・国際営業技人国、身分系語学力+国際感覚が必要
介護施設の生活相談員技人国(社会福祉系学科卒)、身分系専門性と経験が必要
在留資格雇用のしやすさ職種の自由度審査の難度対象者の例
技人国高(ホワイトカラー職)△(職種限定)中〜高大卒・専門職向け
特定技能中(分野限定)×(特定分野のみ)技能実習修了者・試験合格者
技能実習低(手間大)×(実習目的)監理団体と連携必須
身分系(永住・定住等)非常に高◎(制限なし)なし在日長期者・配偶者等
特定活動△(例外的)△(内容限定)留学生の就職活動中など

採用フローと注意点

ステップ1:業務内容の明確化
任せたい業務が明確か?ホワイトカラーか現場職か?

ステップ2:本人の在留資格と条件を確認
学歴、職歴、在留カードの内容をチェック

ステップ3:該当するビザの選定・手続き
在留資格変更やCOE申請の必要性を判断

ステップ4:書類作成・入管申請
雇用契約書、職務内容書、採用理由書などを整備

ステップ5:採用・入社後の支援体制整備
特定技能では生活支援や報告義務がある

よくあるQ&A

Q1. 技人国で接客は可能ですか? → 基本的に不可。接客メイン業務は特定技能か身分系で検討。

Q2. 技能実習生を事務職にできますか? → できません。実習対象業務のみ就労可能です。

Q3. 永住者の在留カードは更新不要ですか? → 在留資格は無期限ですが、在留カードは7年ごとの更新が必要です。

とりかに行政書士事務所のサポート

  • 外国人の在留資格選定・適合診断
  • 各種申請書類の作成・添削・申請取次
  • 特定技能における登録支援業務
  • 採用マニュアルや労務管理体制の整備支援

外国人採用は「適正な在留資格」と「制度理解」が成功のカギです。 まずは業務内容と対象人材の情報を整理し、適切なビザ選定からスタートしましょう。

とりかに行政書士事務所は、初めての外国人採用でも、最初から最後まで丁寧にご支援します!