はじめに

外国人を雇用している企業にとって、本人の在留資格が維持されるかどうかは重要なポイントです。
とくに、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」といった身分系在留資格は、配偶者との婚姻関係が前提となっているため、「離婚した場合どうなるのか?」という不安の声も多く寄せられます。

この記事では、実際に離婚が発生した際の企業側の対応と注意点について、わかりやすく解説します。


離婚後、そのまま在留できるのか?

原則として、婚姻状態が終了すると「資格該当性を失います。

  • 「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」は、婚姻関係があることを前提とした在留資格。
  • したがって、離婚が成立すると、原則としてそのままでは在留資格を維持できません。

ただし、即座に強制退去になるわけではなく、状況によっては在留資格の変更で日本に残ることも可能です。


雇用を継続できるかどうかの判断基準

企業が知っておくべきのは、「離婚=即退職」ではないということです。
以下のような流れで在留資格の見直しが行われます。

離婚後に本人が行うべきこと

  1. 離婚を入管に届け出(14日以内)
  2. 在留資格の変更を検討・申請(例:定住者、技人国など)
  3. 変更が許可されれば、雇用継続が可能

変更許可前の段階では「資格外活動」となる可能性があるため、在留資格の状況を企業側でも必ず確認する必要があります。


離婚後に変更されやすい在留資格の例

変更先の在留資格該当例・条件
定住者日本人との間に子がいる/日本での長期在住歴があるなど
技術・人文知識・国際業務(技人国)大学卒業・専門職就労で条件を満たす場合
特定活動離婚後の一時滞在や就職活動中の滞在許可として使われることも
永住者(将来的に)十分な在留年数と安定収入があれば申請可能

企業が確認・対応すべきポイント

✔ 在留カードの有効期限と資格種別の確認

離婚を知らされていない場合でも、定期的に在留カードを確認し、在留資格の変更が行われているかチェックします。

✔ 本人との連絡・情報共有

  • 離婚したかどうかは本人が言い出しにくいケースもあります。
  • 社内に「外国人雇用相談担当」などの窓口を設けておくと安心です。

✔ 書類対応・就労管理

  • 雇用を継続する場合、新たな在留資格での労働が許可されているかを確認
  • 在留資格変更中の場合、「資格外活動許可」が必要なケースもあります。

雇用継続か?いったん退職か?の判断の目安

状況対応の例
離婚済み・在留資格変更申請中一時的な休職対応/資格外活動許可があればアルバイト勤務も可
在留資格変更が許可された雇用継続可能(改めて契約更新など)
変更不許可 or 失踪・音信不通労働契約解除の検討、入管への相談が必要な場合も

雇用主が「やってはいけないこと」

  • 離婚を理由に即時解雇(不当解雇に該当する可能性があります)
  • 在留資格の確認を怠る(資格外活動に該当すると企業も罰則対象
  • 「永住者と結婚していたから大丈夫」と思い込む(離婚後は在留資格見直しが必要


まとめ

ポイント内容
離婚=即退去ではない在留資格の変更によって日本に残れる可能性がある
雇用継続の条件新たな在留資格での就労許可が下りること
企業の対応在留カードの確認、本人との対話、入管情報の共有
NG行動即時解雇・確認不足・資格無視の就労

「離婚=即退職・即退去」とは限りません。
冷静に制度を理解し、本人の状況に寄り添った対応を行うことで、雇用の継続・信頼関係の維持が可能です。