ここでは飲食店の開業の手順を説明しています。

あくまでも、開業の手引きになりますので、飲食店の開業”許可”の情報が知りたい方は下記の【事前相談】【開業届】に飛んでください。

日本の飲食店

飲食店は日本に現在約80万店舗あるといわれています。

それはおよそ1億2千万人いる日本人の150分の1の数です。

日本人全員が毎日一回外食して、1店舗に毎日150人が来店すればいいのですが、一日に一回も外食しない人・外食しても単価の低い人もいます。

そして、なんの売りもないお店は人気のあるお店にお客様を奪われてしまいますし、そもそも人口の少ない場所で見込みとなるお客様が少ない地域もあります。

そのうえ、飲食店全体の約1割でしかないチェーン店はテクノロジーを駆使し、マーケティングを怠らず、多くの消費者を囲っています。

景気にも左右されやすい、常に荒波の業界です。

ですが、皆さんがこれから始めようとしている飲食業界は、どの業界よりも競合が多いものの、どの業界よりも見込み客数が多いのです。

失敗もしやすいですが、成功もしやすい業界です。

まずは安定を目指し、スケジュール感覚と準備を怠らずにスタートを切りましょう!

開業準備~開業後のタスク

  1. 食品衛生責任者講習の受講
  2. コンセプトの決定
  3. メニュー開発・仕入れ先の選定
  4. 調査
  5. 資金調達
  6. 物件決め・内装打ち合わせ・大きめの機器や家具の選定
  7. 開業時提出書類の作成(飲食店営業許可と消防関係)
  8. 求人
  9. 保健所への事前相談
  10. 消防署への届け出
  11. 各種工事・機器の搬入
  12. 広告
  13. 備品の搬入
  14. 各種届出・保健所の立ち合い
  15. トレーニング
  16. 営業許可が下りる
  17. その他の許認可・届出について

※地域により必要不必要なタスク、順番が前後するタスクがあります。

【①食品衛生責任者講習の受講】から【オープン】まではかなり早いとしても3か月は見ておきましょう。

行政書士に許認可の依頼をされる場合は【調査】【資金調達】が終わったあたりに依頼されるのが適当かと思います。※もちろん思い立ったら吉日・・・【食品衛生責任者講習】の前からでもご依頼承ってます!

食品衛生責任者講習の受講

まずはじめに各都道府県が行っている食品衛生責任者の講習に受講しましょう。

この講習を受けなければ、食品を扱ううえで、食品の衛生責任者が不在の状態になるので、営業許可が下りません。

ただし、三か月以内に食品衛生責任者選任を誓約しての許可申請もできますので、どうしても間に合わない場合は管轄の保健所へ相談することをお勧めいたします。

一日で終わる講習なので、もう少し後のタイミングでもいいのですが早めに受講しておくと、のちに忙しくなったあとに一日つぶれなくて済みますし、場所によっては2か月以上先まで講習の予約が埋まっていたり、なかなか受講できない事もありますので、一番初めにやってしまった方がいいことかと思います。

講習費用は各都道府県によりますが、大体1万円程度。

神奈川県の受講料は令和6年4月から12,100円です。

受講できる者の要件は、神奈川県では、満15歳以上(義務教育履修中の者を除く)で、原則として日本語が理解できる者となっています。

受講をすると食品衛生責任者となることができます。

ちなみに栄養士や調理師の資格があれば講習は不要で食品衛生責任者となることができます。

コンセプトの決定

ここで今後のタスクの核となるところが決まります。

オーナーさんの生活自体が変わるといっても過言ではありません。

「誰に」「何を」「どう提供するか」を決めます。

たとえば・・・

「主婦や学生に」「安価なイタリアンを」「手軽に」

某格安イタリアンチェーンさんなどが該当します。

この場合、某格安イタリアンチェーンさんが競合になるので、向かいに開業するとしたらお客様の取り合いになるため、営業時間を前後させるか、顧客層を変えるか、提供物(売り)の変更を考えなくてはいけません。

他にも

「サラリーマンに」「比較的高価な焼き鳥を」「シックな雰囲気で提供」

「ペット連れの男女に」「ケーキ屋コーヒーを」「自然の中で」

「学生さんに」「ドカ盛りらーめんを」「激安で!」

「ファミリーに」「ヘルシーな新鮮野菜を」「楽しみながら」

などなど、個性が出てくるはずです。

これをもとに次の「メニュー開発」「調査」へ進みます。

メニュー開発・仕入れ先の選定

お付き合いのある食品卸業者や酒卸業者の付き合い方は様々で、お金の払い方も各社違った方法を用意しているかと思いますので、この時期に開業を予定していること、取引を開始したい旨を伝えておきましょう。

販売価格や支払日・支払い方法・送料・運送方法を取り決めます。

大きなランニングコストとなるところです。

メニュー開発については、調理業務経験皆無という方は少ないかと思います。

私よりも皆さんの方が知っている所かと思いますので、割愛いたします。

調査

何の調査かというと、店舗前の人の流れ、見込みのお客様になる人口の統計、どんな層の人が住んでいるのか、駐車場が用意できそうであればどんな層がどの時間に道路を利用しているのか、近隣の店舗の客層や客単価などを把握するための調査です。

お医者さんには有料の調査機関の利用を推奨していますが、飲食店の場合情報も多くネット上にあるため、無料のツールで十分かと思います。

例として挙げますとgooglemapで出店予定場所を選んだあと、下部にある「スポット」から、自分の店の看板商品である「唐揚げ」と打ち込んで調べてみると、競合となりそうな店舗が出てきます。

また、人口統計ラボも合わせて使ってみましょう。

外食ニーズのメイン層になりやすい独身現役層や、コンセプトにあった顧客の具体的な人口数が出てきます。

資金調達

ついにお金の話です。今までは構想の中だけだった話が、現実味を帯び、一気に展開します。

資金調達の方法は主に

自己資金

親族知人からの出資・融資

公庫

民間金融機関

クラウドファンディング

などがあります。

物件決め・内装打ち合わせ・大きめの機器や家具の選定

ここから一気に出費が増えます。

調査をもとにコンセプトに適切な地域を大枠として決め、物件を探します。

飲食店可能物件のみを掲載しているサイトなら、すぐに見つけることができますが、意外と掲載していない店舗が隠れていたりもしますので、店舗の周辺にある不動産屋さんに直接行くのもいいかと思います。

(ちなみに、統計によると飲食店に廃業が多い月というのは特にないそうです。つまり、飲食店向けの物件の空きが増える月というのが、特にないということです。)

数件の内見予約を入れてもらい、必ず使用しなくてはならない調理機器や冷蔵冷凍保存機器の設置が可能か、メジャーを持参し、調べながら当日の内見を行います。

物件が決まりましたら、審査申し込み、保証会社の審査が承認となったら、大家さんと契約になります。(たいてい管理会社など不動産屋さんの事務所での手続きとなります。)

そのほか、保険にも加入する手続きがあります。

その後、物件がスケルトンの場合は早めに各種工事業者を決めなくてはいけません。

その際は機器はもちろん客席などの家具の大きさ、作業の銅線などを伝えアドバイスを仰ぎましょう。

それから、このあたりからお店の名前をどうするか考えておきます。行政書士とのやり取りの上で便利ですし、前の調査の結果、近隣の競合の名前を把握している状態なので、類似している店名を避けて名前を考慮しましょう。

開業時提出書類の作成

物件が決まると、作成できる書類も増えますし、あらかた作ってから事前相談時に持っていくと、行政側もアドバイスがしやすくなりますから、揃えられる書類はどんどん早めに作っておきましょう。

求人

皆さんの手となり足となってくれるパートナーの選定です。

各種求人媒体がありますが出店希望地域に強い求人媒体がいいでしょう。

遠い住所の従業員を選ぶと交通費も年間にすると馬鹿にならなくなります。

ランニングコストを考えるのであれば、1日短期専門の求人媒体で人数確保を検討していきましょう。

保健所への事前相談

内装の工事が入る前に内装の図面を工事業者さんからもらい、【開業時提出書類の作成】で作成した書類一式をもって保健所に事前相談に行きます。

他の許認可にも言えることなのですが、事前相談の機会はとても重要でなおかつ貴重です。

スムーズに処理してもらえるよう、まずは必ず電話で相談の時間を予約して、約束された時間に相談に行きましょう。

書類の不備を指摘してもらい訂正し、内装図面もチェックしてもらい、OKがでたら内装工事が開始できます。

(順番が前後し、内装工事が済んだのに保健所からNGが出てしまうと、大変なことになります。必ず内装工事が入る前に相談に行きましょう。)

消防署の届け出

消防署への各種届出は、飲食店を営業開始する場合、大抵3から4種類有ります。

各種工事・機器の搬入

予定していた各種の工事です。

内容により期間は前後しますが、だいたい2〜3週間を目安に見ておきましょう。

工事が終了した時点で調理機器や椅子、テーブル、会計に必要な設備の搬入をしましょう。

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内装工事中に済ませておきたいのが看板・名刺・チラシ・HPの作成です。

特に、今はプロでなくても手軽に無料でHPが作成できます。しかし、ネット上での集客をメインに考えている場合はプロに依頼しお金をかけることを視野に入れましょう。

その他にも、デジタルクーポン・デジタル会員カードを発行することを考えているならこのタイミングで導入します。

また、地域やメインの客層によっては、チラシの宣伝効果の方が高いケースもありますので、調査の結果を考慮し、一つの集客ツールにだけ頼ることのないよう、様々なアプローチを準備していきます。

備品の搬入

お客様へ提供時に使用するお皿、コップ、お盆などこまごまとしたものを揃えていきます。

オリジナルノベルティを使用する場合や、クーポン券や会員カードを発行する場合は印刷会社に持ち込まないといけないので、内装工事前に準備してもいいでしょう。

そのほか、のれんや観葉植物、ティッシュやトイレットペーパーなどの備品も購入します。

各種届出・保健所の立ち合い

許可の申請書を提出後、翌日〜1週間以内くらいに保健所の立会が行われます。

飲食店であれば、客席は完成してない状態でも立ち合い検査は可能です。

主にみられる部分は調理場・トイレ・更衣室ですが、調理場の調理器具やお皿などは用意が済んでいなくても基本的にはその他の必要部分が確認できれば許可がおりるといわれています。

トレーニング

機器・備品など全てが終わった後行うのは、パートナーである従業員の方へのトレーニングです。

メニューごとの作り方や、配膳の方法、会計のシミュレーションなど、覚えてもらうことはたくさんあります。

あまりトレーニングやコミュニケーションを取らずオープンを迎えると、数人雇ったはいいものの、従業員のクオリティが低いままだと営業においての障害となるのはもちろんのこと、オーナーが従業員の顔と名前覚えられていないなど、壊滅的なオープンになる可能性あります。

この時期を活かし従業員の特性を把握して、ホールに適しているかキッチンに適しているか見極められる期間でもあります。

また、この時期、営業許可がおりていない場合はまだお客様をいれて食事の提供ができません。

この期間を利用して、家族に試食してもらったり、実際行うサービスを見てもらいましょう。そうすることにより、忘れていた、無くてもいいと思っていた「あの備品が足りてなかった」「あれがあった方がいいかもしれない」という気付きが出てきます。

試食会は、クレームの予防という点でも、記念としても、開業までに余裕があれば行うといいかもしれません。

営業許可が下りる

営業許可が下りると、実際にお客さんを店内に入れ、飲食を提供し、金銭を受け取ることができます。

各種証書はお客さんの見える位置に掲示しましょう。

その他の許認可・届出について

飲食店は、非常に個性豊かな業種です。

食事や飲み物のおいしさはもちろん、居心地の良さも大切なところです。

競合は右を見ても左を見てもあふれるように存在しますので、差別化をしていかなくてはいけません。

そうとなったら、気にしないといけないのが食品衛生法以外の法律です。

例えば・・・・

  • お客様の送迎をする
  • タバコを販売する
  • 喫煙可能にする
  • 営業時間を延ばす
  • 店内を暗くして雰囲気を出す
  • 従業員にお客さんを接待させる
  • 看板犬を飼う
  • ゲーム機を設置する
  • 密室で過ごす空間を作る

どれもお客さんが喜びそうなサービスですが、上記の例はいずれも、一定の条件を満たすと、飲食店の営業許可以外の許可が必要になる可能性のある事例です。

新たなサービスとして始めたものが、実は許認可や届出が必要で、知らずにサービスを開始していたら、【無許可営業】になってしまう可能性があります。

新たなサービスや、同じサービスでも時間の変更などがあったら、行政書士・管轄となっている行政庁にアドバイスを仰いでください。

オープン

ついに長い冒険の始まる時が来ました。

多くのトラブルにも出会うかと思いますが、様々な困難を出来るだけ回避し、成長を目指していきましょう。

私たちは、ここで開業サポーティングメンバーとしてはお別れですが、一友人として、今後も携わっていきます。

とりかに行政書士事務所は、許認可を通じ皆さんの人生を応援しています。

マイクロフォンの中から頑張れって言っている甲本ヒロトの理屈と同じです(?)。

行政書士業務以外でも、なにかお困りごとがあったらぜひご連絡ください。