留学生採用市場の動向と将来性

留学生人口の推移と現状

  • 日本国内の外国人留学生数は約20万人(日本学生支援機構・2023年)
  • コロナ禍で一時的に減少したものの、2023年から回復基調
  • 留学生の8割以上がアジア出身で、中国・ベトナムで6割以上を占める
年度留学生数(約)備考
2019年31万人過去最高を記録(コロナ前)
2021年24万人入国制限などで一時減少
2023年20万人回復傾向、再拡大フェーズへ

コロナ後の就職志向が強まっており、国内定着を希望する学生が増えています。

採用市場としての魅力

求人倍率に対する供給バランスの良さ

  • 日本人学生だけではカバーしきれない中小企業・専門職求人に対して、
  • 留学生は「専門知識」+「日本語能力」+「異文化対応力」を兼ね備えた貴重な即戦力候補
  • 特に「地方」「IT」「貿易・多言語対応」などでマッチングの可能性が高い

外国人材市場の拡大トレンドと整備されつつある受け入れ制度

  • 出入国在留管理庁による就職支援政策(在留資格の明確化、特定活動の活用など)
  • 外国人雇用対策に前向きな大学・自治体も増加(例:留学生向け就職支援室の設置)

今後期待される市場変化と企業の備え

項目変化の方向性企業が取るべき対応
留学生の属性卒業後も日本で働きたい層が増加早期接触・長期雇用を前提とした説明が必要
言語力・文化理解日本語N2以上+在日経験で業務適応がしやすい日本人新卒と同等に評価・育成できる体制整備
競争環境大企業も留学生採用に本格参入自社の独自支援(生活・研修・制度)を強化
在留資格制度技人国の適用範囲の整理・緩和専門家と連携しスムーズなビザ手続を準備

外国人留学生採用市場は「ブルーオーシャン」?

日本人新卒市場は限られた人材を多くの企業が取り合う「レッドオーシャン」である一方で、外国人留学生は言語・文化・制度という参入障壁を正しく乗り越えれば日本人新卒市場に比べ、確保しやすい人材層です。

特に以下の企業には、積極的な参入がおすすめです

  • 海外進出や訪日顧客対応を視野に入れている企業
  • 多言語・多文化に強い組織をつくりたい企業
  • 中小・地方企業で採用が難航している企
  • 学歴やスキルを重視したポテンシャル採用をしたい企業

留学生を卒業後に正社員として確保するための具体的アクションとは?

外国人留学生の採用市場が拡大する一方で、「内定を出しても辞退された」「入社直前に連絡が途絶えた」というケースも少なくありません。

ここでは、企業が計画的に、確実に留学生を確保するためのステップを解説します。

ステップ1 在学中に 明確な接点 を持つ

アクション内容
大学キャリアセンターと連携外国人留学生を対象にしたインターンや説明会を開催
留学生向け就職フェアの参加JOB博、JETRO等で直接接触し、母語でも対応できる体制を伝える
オンライン・オフライン面談の併用海外帰省中や通学制限中でも面談できる体制を用意

学生は「外国人対応に慣れている企業かどうか」を慎重に見ています。

ステップ2 内定前に不安を取り除く

不安の内容解消方法
ビザが取れるか?技人国への変更支援ありと明言(行政書士のサポート説明)
生活費が足りるか?給与モデル、寮・住宅手当、交通費補助などを説明
職場の雰囲気がわからない先輩外国人社員の紹介、インターン制度、会社見学

契約条件や文化面の不安を解消できる企業が選ばれやすくなります。

ステップ3 卒業~入社までの つなぎ が重要

期間取り組み例
卒業前内定者向け日本語・ビジネスマナー研修(Zoom可)
卒業後〜入社前アルバイト雇用やインターン参加で接点を維持
入社1ヶ月前在留資格変更完了報告・受け入れオリエンテーション

卒業から入社までの「空白期間」が長いと辞退率が上がります。継続接触がカギ。

ステップ4:入社後すぐに 職場内の定着環境 を整える

  • やさしい日本語での業務指導マニュアル
  • 翻訳ツール・サポートアプリ(例:DeepL、Talk&Translate)の活用
  • メンター制度(文化もフォローできる先輩社員を配置)
  • 月1回の1on1面談で就労・生活の課題をキャッチ

ステップ5:長期雇用のための 将来像 を描かせる

内容具体例
昇格・評価制度外国人にも公平な昇進評価制度があることを説明
将来的な在留資格拡大技人国→永住者への可能性を示す(本人の将来計画に貢献)
海外業務や本国展開との連携「帰国後もつながれる」仕事モデルがあると安心感が増す

ポイント:外国人材は「将来が見える会社」を選びます。3年後、5年後のビジョンを共有することが大切です。

成功している企業がやっていること

取り組み成果
留学生対象の自社採用パンフレット(母語対応)エントリー数が2倍以上に増加
先輩外国人社員のインタビュー動画配信企業の安心感・透明性が伝わり辞退率が低下
ビザ申請のワンストップ対応(行政書士連携)面倒な手続きの不安を完全解消、信頼度UP
入社後半年での定着率フィードバック制度定着率改善、社内評価制度の公平性向上

留学生採用に強くなること=外国人雇用の第一歩

  • 留学生採用は、制度が明確で大学側の協力も得やすいため、**外国人雇用の“登竜門”**ともいえます。
  • 最初の一人目をしっかりとサポートすることで、社内に理解とノウハウが蓄積され、永住者や特定技能への展開もスムーズになります