毎日お勤めお疲れ様です。
このページは診療所や医療法人に勤務されているドクターが主に見てくださっているかと思います。
診療所開設の一番良さは「自分で裁量権を持てること」だと思います。
勤務地はもちろん、勤務時間も先生の思うままです。勤務医の皆さんも一度は自分の診療所開設を一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
実は、診療所の開設はさほど難しいものではありません。
医師免許と資金と時間が準備できれば可能です。(それがそもそも難しいのですが、医師免許までたどり着いた皆さんなら資金調達もやってのけるでしょう。)
ちなみに、診療所開設に最低限必要なのは、ざっくり以下の3つです。
①臨床研修修了した医師
②適切な施設・設備(保健所がOKをだす施設)
③厚生局の指定
いい診療所経営となるか否かのポイントとなるのは開設前における
- 資金の調達方法
- コンセプト・目的の明確さ
- 診療圏調査と開設地域の選定
- 資金の使い道
にかかっています。
このページでは、診療所開設の流れを説明していきます。
流れとしては、以下の通りです。
- コンセプト・目的の決定
- 診療圏調査の実施
- 資金調達
- 物件選び・内装の原案作り
- 機器の調達準備
- 書類作成スタート
- 保健所への事前相談
- 内装・インフラ工事
- 機器の搬入
- 広告の準備(集患・求人)
- 開設届の提出
- 社会保険の手続き
※規模や予算によってはタスクに前後があります。例えば借入の額が少ない場合は資金調達はもっと遅くても間に合いますし、内装が華美であれば時間がかかるので、早巻きで動かなければなりません。
ちなみに目標とする開業の時期に関しては、インフルエンザなどの流行に合わせるというのも一つの手かと思います。
確かに難しい作業ではないですが、非常に手間がかかり楽ではありません。
忙しいドクターが1から誰の手も借りず開設するのはかなり厳しいかもしれません。
当事務所は行政書士業なので⑪のお手伝いをメインにしておりますが、①の時点でのご相談も承っています。
超朝型営業なので朝五時から営業開始しており、アポイントは場所によりますが主に朝六時から可能です。
当直後の早朝など、ぜひご検討ください。
それでは診療所開設の流れを見ていきましょう。
①コンセプト・目的の決定
飲食店をやるにしろ、建設業をやるにしろ、なにを始めるときも、まず決定しなくてはいけないことは「コンセプト」(なにを・どうしたいか)です。
例えば診療内容や患者さんの種類でいうと「働いている女性向けの終業後でもいける皮膚科を開きたい」「男性向けの薄毛や筋肉の増量に特化した健康増進を柱にした診療所にしたい」など。
先生目線でいうと、「自費診療メインでやってみたい」「在宅診療に専門特化したい」「朝(もしくは夜)に活動時間を集中させたい」「平日休んでプライベートを確保し、土日は仕事したい」などです。
もっというと「この世から糖尿病をなくす!!」という理念のみでも構いません。
この診療所のコンセプトや目的であらかたのお客様の属性や開設する地域、営業時間が変わってきます。
コンセプトや目的に則った診療所でないと、患者さんにもつたわります。先生にとっても始める意味がない診療所となります。もし大きな問題が起きた時に解決できるほどの気持ちの強さが出なくなるかもしれません。
そうはいってもコンセプトの決定というのはなかなか難しいものですよね。
では、「どうしてこの仕事を目指したのか?なにが得意でなにが強みか?」と自分に聞いたときに答えが出てきやすいかと思います。
日本で一番の難関資格といわれる医師免許を持っているということは、強靭なハートを支えるための目的がすでにあるのではないでしょうか。
今は勤務医として、多くの方が大学病院にいらっしゃるかと思います。
サラリーからリワードになりますが、ここはどれだけ自分の時間を奪われることなく、リワードを得られるかの大切な部分にもなります。
ぜひ、時間を作って考えてみてください。
②診療圏調査の実施
診療圏調査というのは簡単にいうと「お医者さんに不可欠なマーケティング調査」です。
自費診療メインの業務はもちろんのこと、保険診療メインの診療所にもマーケティングが必要です。
自分のコンセプトに適合する人はどの地域にどのくらいの数存在し、競合となりそうな医療施設はいくつあり、どのくらいの距離があるのか。
また、地域により住民に特徴があります。
車の運転が日常となっている住人が多ければ、住まいと診療所が遠くても見込みとなりますが、そのかわり駐車場を用意しなくては受診の候補としてあげてもらえないかもしれません。
ビジネス街では現役世代が見込めますが、営業時間が夜遅くなければ来てもらうことは難しく、営業時間の変更が必須となったりします。
ですが、ビジネス街と思っていた駅に、意外にも高齢者人口が集中していて高齢者向けの医療施設のニーズが見込めたりします。
若いカップルが多いからと言って子供が多いわけではなく、小児科のニードがなかったりと、診療圏調査では様々な事が把握できるのです。
大変重要な調査となりますので、ぜひ詳細な情報を得られる調査機関を利用することをお勧めします。
開業後でも有益な情報となり、経営に直結するような、例えば利用者が減った理由や増えた理由のヒントにもなります。
それから、このあたりから診療所の名前をどうするか考えておきましょう。行政書士や他の士業とのやり取りの上で便利ですし、調査の結果、近隣の医療施設の名前を把握している状態になるので、かぶらない名前を候補として決めることできます。
(近隣の医療施設と名前が似すぎていると保健所から変更を求められる場合もあります。)
名前が決まり次第ロゴ作りをしましょう。
夢が広がり、モチベーションが上がるのでお勧めです。
ネットでよくある、ココナラなどを利用してもいいかと思います。
③資金調達
親御さんから受け継いだ資産はありますか?
開業医は一般的に支出が非常に多くあります。
間違った選択をすると資産家のお子さんでも、ドクターであっても破綻します。
大抵の融資は、破産しない限り返済を求められます。
ということでここも非常に大切な箇所です。
資金の調達方法にはいくつか種類があります。
- 自己資金(貯金)
- 親族・支援者からの出資(融資)
- 医師信用組合の融資
- 補助金・助成金
- 公庫
- 各種民間金融機関(ドクターローン)
- その他
一般的に診療所の開設には4桁万円の資金が必要です。いくらお医者さんといえど、それを全部自己資金で賄うのは困難な場合も多いのではないでしょうか?
借入の際は事業計画や理念など、初めてでどう書いたらいいかよくわからないという方が多くいらっしゃいます。
当事務所では事業計画書作成に長けた元銀行マンや商工会議所出身者のコンサルタントや税理士とも提携しております。
是非この点においては専門家の意見を取り入れてください。
また各種融資は、当たり前ではありますが、使い道にチェックが入ります。借りたお金を返せればそれでいいわけではありません。
約束と違った使い道をした場合、一括返済を求められることもあります。
お金に関することは正確に、明朗に、綺麗に、管理していきましょう。
ちなみに、先ほどお話した診療圏調査の見込み患者数などの数字は、借り入れる額の根拠にもなります。
過疎地などでは開業を手助けする補助金が市町村で実施していたりします。
調べてみると結構な高額だったりもするので、もし地方にある地元で開業するという方がいらっしゃったら、ご自身の生まれの市町村での診療所開設の補助金の有無を調べてみてください。
④物件選び・内装の原案作り
ついに形ある物選びに入ります。
診療圏調査をもとにコンセプトにあった物件を探し始めます。その際、まず考えなくてはいけない事は、テナントを借りるのか、土地を買いもしくは借りて診療所を建てるのか。ここだと思います。
私はテナントを借りるのでもいいのではないかと思います。
借りるか建てるかで、ドクター自身の人生設計が大きく左右されるためです。診療所兼自宅という選択肢もありますし、今後患者数が増加してきたら法人化することを加味すると、土地を知るという意味でも、テナントでもいいのではないかという意味です。
既に土地を持っているなどの事情があれば最初から診療所を建てても、テナントに入るのと同じ出費だったりもします。また、初期費用を抑える手として居抜きで入るという手段もあります。
ちなみに、大家さんがOKで、保健所に相談の上問題ないということであれば、普通のマンションの一室でも開業は可能です。(設備が入らないなど他の問題が生じるケースが発生しますが)
地元の不動産屋さんで探してもらうと、大家さんと交渉してもらえますし、その他にはクリニック専門の不動産サイトで探すと、数は少ないですがすぐにクリニックに最適な物件自体には出会うことができます。
弊社でも条件を提示していただければ、物件探しからお手伝いいたします。
物件が決まったら、患者さんの待合室の家具の相談なども含め内装業者さんと話を進めていきましょう。見栄えはもちろんですが、建具や壁紙などの耐久性はどのくらいなのか、修繕はどのように行うかなど後々かかってくるお金も加味して決めなくてはなりません。
内装業者さんは医療施設の施工経験のある工務店をお勧めします。
こちらもどこの工務店さんがいいか分からない場合、弊社で経験豊富な工務店さんをご紹介いたします。
⑤機器の調達準備
内装があらかた決定したら、次は機器の調達先の選定です。
リースにするか購入するかは、ある程度は資金調達の時点で決めなくてはいけません。
また、医療機器だけではなく、電子カルテ・レジスター(会計機)・PC・待合室のTVなどのリース・販売業者などもこの段階までに決めておきたいところです。
内装工事が終わってから決めるという方も多いようですが、候補は早めに挙げていいかと思います。
⑥書類作成スタート
物件が決まると、作成できる書類も増えますし、あらかた作ってから事前相談時に持っていくと、行政側もアドバイスがしやすくなりますから、揃えられる書類はどんどん早めに作っておきましょう!
作成する書類は
- 診療所開設届
- 管理者の臨床研修修了登録証の写し・免許証の写し(臨床研修修了していなければ管理者にはなれません)
- 管理者の履歴書
- 診療に従事する医師・助産師・薬剤師の免許証・履歴書
- 土地・建物の登記事項証明書
- 土地賃貸借契約書の写し(テナントの場合)
- 駅からの案内図
- 診療所周辺の見取り図
- 敷地の平面図
- 建物の平面図
以上が保健所に提出する書類になります。届出書類のひな形は各地域の保健所などのHPでダウンロードできます。
その他、X線装置を設置する場合は別途書類が必要になりますし、内装もX線装置を設置するに適した構造にしなくてはいけません。
⑦保健所への事前相談
内装の工事が入る前に内装の図面を内装業者さんからもらい、上記の書類とともに保健所へ持参し相談をします。
他の許認可や届出にも言えることなのですが、事前相談の機会はとても重要でなおかつ貴重です。
スムーズに処理してもらえるよう、まずは必ず電話で相談の時間を予約して、約束された時間に相談に行きましょう。
内装図面をチェックしてもらいOKがでたら、内装工事が開始できます。
(順番が前後し、内装工事が済んだのに保健所からNGをだされたりしたら、大変なことになります。必ず内装工事が入る前に相談に行きましょう。)
⑧内装・インフラ工事
内装・各種インフラの工事に入ります。
通常の目安として4週間はかかるとみておきましょう。
⑨機器の搬入
決めておいた医療機器に問題がなければ契約(購入・リース)をし随時搬入を始めます。
壁紙が張られ、椅子やテレビ、キッズコーナー、観葉植物が備わり、医療機器も入ると、広告の写真がとれるようになります。
綺麗な診療所でいられるのはこの時期の一瞬です!!!
どれだけ清潔にしても手垢がつきます。
多くの人が出入りしてくださるのはありがたいですが、すぐ汚れてきますのでこのわずかな時間にいっぱい写真を撮っておくことをお勧めします。
⑩広告の準備(集客・求人)
⑨と同時並行して、HPの作成や求人の広告、チラシやポスター看板の作成・設置に入ります。
どのようなコンセプトの診療所なのかが伝わる工夫が大切です。HPにはコンテンツを増やし、予約システムの導入も検討しましょう。
顔出しする場合は、なるべくプロに撮って貰いましょう。
また、このような開業直前期までに忘れがちな問診表や診察券も準備が必要です。
デジタル診察券の場合はHP作成時に同時に導入していきます。
また余裕があれば、採用後は開業前に一度集まってもらい、顔合わせもしてほしいところです。
名前と顔が一致しない状態で初めての診療所で働くのは、医師もスタッフも大変ですし、事故にもつながります。
「この人いい人そうだな」「頼りがいがあるな」「こういうことが得意なのか」などスタッフ間でつながりを持っていてもらうことも大切です。
⑪開設届の提出
そして内装工事やその他の準備が終わり、医療施設として稼働できるようになった状態になりましたら、《《すぐに!!》》その日にでも開設届を出します。
開設届とは⑥で説明した書類一式です。
保健所の担当者の方が記憶が鮮明なうちに、そしてドクター自身もアドバイスされた注意点などを忘れないうちに全ての手続きを終えておきましょう!
上記の書類作成や提出、各種機関への連絡などが行政書士に任せられる業務です。
下記の⑫の作業は社労士の先生の業務になります。
当事務所では、若く優秀な提携社労士さんにバトンタッチをしています。
⑫社会保険の手続き
まだ⑧の時点では保険診療ができません。ここからは厚生局に保険医療機関の指定を受け、患者さんが各種の保険を利用して診療を受けられるような状態にしなくてはいけません。
⑬そして数年後
多くの患者さんと出会い、経営のパートナーとなる各士業の力を借りながら、新たな医療技術、経営やマーケティング、経理や社会保障など多くを学びながら紆余曲折し、いい診療所が出来上がっているはずです。
その後は、もっと公私を分けたいと思われたり、税務の関係上、法人化というステージに上がることも考えるときが来るかと思います。
そんな時はまた是非とりかに行政書士事務所にご連絡ください。
私たちも、以前よりもずっと成長しているはずです。
⑭お金について
ここでは一般的な診療所開設についてお話いたしましたが、費用は非常に高額でした。
これが普通の診療所開設です。
ですが近年、医師の給与額も下がってきています。
自己資金をなかなか貯められなくて多額の借入金をしてスタートするのは怖いというドクターも多いかと思います。当然の考えです。
診療所自体は、一番最初にお伝えした通り、三つを満たせば開設が可能です。
経営者として「初期費用を抑えてスタートしたい」というお気持ちも非常にわかります。
弊社では、平均の半額以下からできる診療所開設のご説明にもお伺いしております。
ご興味があれば是非ご連絡ください。
ついに始まりが終わり、長い冒険の始まりです。
多くのトラブルにも出会うかと思いますが、様々な困難を出来るだけ回避し、成長を目指していきます。
私たちは、ここで開業サポーティングメンバーとしてはお別れですが、一友人として、今後も携わっていきます。
とりかに行政書士事務所は、許認可を通じ皆さんの人生を応援しています。
マイクロフォンの中から頑張れって言っている甲本ヒロトの理屈と同じです。
行政書士業務以外でも、なにかお困りごとがあったらぜひご連絡ください。