ブリーダーを目指すGさん
ブリーダーとして独立を目指す宮前区在住の愛玩動物看護師のGさん。
動物看護師として動物病院で勤務中、保護犬として引き取られてきたダックスフンドの「モコ」と運命の出会いを果たす。
モコが繁殖犬として生きてきたブリーディング施設の劣悪な環境を知っていくうちに、動物看護師として、業界に寄与するために、適正適法に動物たちが幸せに暮らしていくためのブリーディング事業を始めるのを試みる。
しかし、動物の生態に関しては知識情報経験もあるが、法律の知識はあまりない・・・。
Gさんは、友人に聞いた最寄りの行政書士事務所に連絡をしてみることにした・・・。
今回は「第1種動物取扱業者」に「本気でなる」ための方法が分かる記事です。要件さえ満たしていれば特別難しい申請ではありません。
記事が長い&初歩的な情報を網羅したページなので、本気でやってみたいと思っているけど、どうしたらいいのかわからない・・・という人向けの記事です!
はじめに
こんにちは。僕が動物看護師になったのはまだ平成のころで、令和になってから、動物愛護法も改正したって聞いて、詳しいことが知りたいなと思って来ました!
動物看護師さんにはいつもお世話になってます。
そのとおりです。令和になったときに、動物愛護法もちょうど改正したんです。
令和元年6月19日の動物の愛護及び管理に関する法律の改正が行われました。
動物愛護法の改正の目的とは
【動物取扱業のさらなる適正化】
その適正化のために動物取扱業の基準の具体化が行われました。これまで何度も行われた法改正で、必要な措置を行わなければならないはずの不適切な飼養等がみられる動物取扱業者の改善が図られなかったことが、今回の法改正につながっているといわれています。
いままでは結構大雑把に決められていたのが、細目までチェックさえるようになったんです。
犬猫を取り扱う事業者の共通事項
事業(展示・輸送・繁殖・貸し出し・競りあっせん・訓練・譲渡・保管等)にかかわらず、犬や猫を取り扱う場合は、必ず守らないといけない基準が以下の5つの項目です。
- 飼養施設・設備(ケージ等)について
- 従業員数について
- 環境の管理について
- 疾病等に係る措置について
- 動物の管理について
これは、どんな業種でも、動物を取り扱う業種であれば守らないといけないことっていう事ですね?
その通りです。
では、詳しく見ていきましょう!
飼養施設・設備(ケージ等)について
①ゲージの必要な大きさ
ケージの大きさの基準には2種類あり、運動するスペースと休むスペースが分離された【運動スペース分離型】と、休む場所と運動する場所が一体となっている【一体型(平飼い)】の2種類があり、それぞれ必要とされる規模が異なります。
【分離型】
〈ケージスペースの基準〉
犬・・・タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
猫・・・タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の3倍以上)、1つ以上の棚を設け2段以上の構造。
〈運動スペースの基準〉
一体型と同じ若しくはそれ以上の面積。常に運動ができる状態に維持すること。
【一体型】
犬・・・床面積(分離型ケージサイズの6倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
複数飼養する場合:床面積(分離型ケージサイズの3倍以上×頭数分)と最も体高が高い犬の体高の2倍以上を確保。
※床面積は、同時に飼養する犬のうち最も体長が長い犬の床面積の6倍以上が確保されていること。
猫・・・床面積(分離型ケージサイズの2倍以上)×高さ(体高の4倍以上)、2つ以上の棚を設け3段以上の構造とする。
※複数飼養する場合:床面積(分離型ケージサイズの面積以上×頭数分)と最も体高が高い猫の体高の4倍以上を確保。
※床面積は、同時に飼養する猫のうち最も体長が長い猫の床面積の2倍以上が確保されていること。
※繁殖時:親子当たり上記の1頭分の面積を確保(親子以外の個体の同居は不可)。
ご存知かとは思いますが、そもそも大きさを調べるときは
どこからどこをはかるのでしょうか?
ここでおさらいします。
体長・体高とは
体長・・・胸からお尻までの長さ(しっぽ含まず)
体高・・・四足で立った状態で地面から顎(首)までの高さ
でも赤ちゃんの時は小さいですよね?
皆さんどうしているのでしょうか?
【子犬・子猫を飼養する場合】
幼体の状態では体の大きさもなく基準を満たしていても、成体となった状態でケージがそのままだと体の大きさに合わず、基準を満たさなくなる場合が多いです。その場合は基準違反になってしまいます。
そのため、幼体のころから大人になっても使える大きさのケージをあらかじめ確保をしておくか、体の大きさに合わせてケージを変えるなど、環境を整える必要があります。
②その他のケージや施設に関する基準
- 床に金網が使われていない。
- ケージ等と訓練場にサビ、割れ、破れ等の破損がない。
- ネズミなどの侵入が起こらない構造。
- 掃除がしやすい構造。
- 耐水性のある素材でできていること。
- 給餌給水が可能な設備となっている。
- 転倒転落がないようケージが固定されていること。
- 糞尿が漏れない構造となっていること。
- 遊具などケージ内にいる動物に合った安全な遊具などの設置。
- 脱走ができない強度であること。
・・・などがあげられます。
従業員数について
犬や猫を適切に管理するには、適切な人数の確保は必須です。そのために守らなくてはいけない基準、覚えておきたい人数の計算方法があります。
犬猫に対しての従業員数の原則
犬又は猫の飼養施設においては、飼養又は保管に従事する職員が飼養又は保管をする頭数の上限は、1人当たり犬については20頭(うち繁殖犬は15頭)、1人当たり猫については30頭(うち繁殖猫は25頭)で、これを超えての飼養保管は認められません。 ※犬猫ともに保管する場合は別の基準があります。
1人当たり犬については20頭(うち繁殖犬は15頭)、1人当たり猫については30頭(うち繁殖猫は25頭)・・・ここまではいいのですが、この「必要な人数」「そもそも犬猫の数え方」の解説をしていきます。
①飼養保管に従事する職員数の常勤換算の方法を理解し、算出しましょう!
常勤ってどういうこと?
「常勤」と聞くと正社員であることを連想させますが、実際ここでいう「常勤」に該当するかどうかは、正社員であるか、パートタイマであるかなど雇用関係の種類は関係ありません。
事業所における勤務時間が、当該事業所において定められている「常勤の職員が勤務すべき時間数(週40時間)」に達しているスタッフの事です。
常勤の職員以外の職員(週40時間未満のスタッフ)
では、勤務時間が週40時間未満の労働形態のスタッフはどのように扱われるのでしょうか?
この「常勤の職員以外の職員(40時間未満勤務)」を員数の算出は、「常勤の職員以外の職員」に該当するスタッフ全員の勤務時間を足して(週単位)、これを「常勤の職員が勤務すべき時間数(40時間)」で割った数が員数として換算できます。これを「常勤換算」と言います。
40で割ったときに端数がある場合は、小数点以下は切り捨てます。ボランティアさんについても同様の方法で常勤換算をします。
【例】ブリーダー施設 猫玉 のメンバー
人員 | オーナー | バイトC |
時間/週 | 40時間 | 10時間 |
この場合、猫玉の常勤員数は、週40時間のオーナー1人。40時間未満のスタッフ1人の総勤務時間が、週10時間。40に満たないので切り捨てます。
1人の常勤だけがいることになり、犬には20頭(うち繁殖犬は15頭)、猫は30頭(繁殖猫は25頭)まで飼養できます。
【例】ペットショップ 猫星 のメンバー
人員 | オーナー | 正社員A | 正社員B | バイトC | バイトD | バイトE | バイトF |
時間/週 | 40時間 | 40時間 | 40時間 | 40時間 | 16時間 | 16時間 | 12時間 |
この場合、猫星の常勤員数は、週40時間のオーナー含めたスタッフが4人。40時間未満のスタッフ3人の総勤務時間が、45時間。45÷40=1.25
小数点は四捨五入し、5人の常勤がいることになります。5×30で150頭の猫、若しくは5×20で100頭の犬が飼養可能です。
※犬も猫も取り扱いがある場合は、また別の頭数の取り決めがあります。
②犬猫の数の把握、適正な頭数の管理 ※親と同居する子犬子猫、繁殖引退犬猫を除く※
職員1人当たりの飼養保管頭数の上限は、犬は20頭、猫は30頭までとそれぞれ定められています。
そのうち繁殖犬猫がいる場合は、繁殖のための作業が追加されると考えられるため、繁殖犬は15頭・繁殖猫は25頭までと頭数の基準が変わります。ちなみに、親と同居する赤ちゃん犬・赤ちゃん猫の場合は、何匹生まれるかの予測は難しいため、赤ちゃんの頭数は含まれません。その赤ちゃんを産んだ親犬・猫と離し始めてから、初めて頭数に含まれます。
動物の頭数の管理・適切な人数の確保は必須です。
④職員数が適正か書類で確認できるように常にしておく
適切な人数で適切な数の犬猫が管理されているのか実態を把握するために、動物取扱業専用のシフト表などでスタッフ数などを常に把握しておきます。スタッフ数もそうなのですが、重要なのは勤務時間です。毎週の計算をし、スタッフの管理を行います。
営業時間が週に40時間未満である場合は?
トリミングサロンなど一時的犬猫を保管する施設の場合で、店舗の営業時間そもそも週に40時間以内などの場合は、その営業時間に応じて、頭数に見合ったスタッフの数を配置します。
たまプラ店と溝の口店など店舗が分かれている場合は?
同じオーナー・資本であっても店舗ごとに計算されます。三つの店舗であっても同様です。
たまプラ店と溝の口店、どちらも勤めている正社員Aさんの場合・・・たまプラ店でも溝の口店でも常勤1人として計算されません。それぞれの店舗で非常勤のスタッフと同じ計算方法でカウントされます。
ペットショップとトリミングサロンなど、同じ場所で複数の事業を行う場合は?
この場合、販売業と保管業と違う業種で登録されることになります。違う業種を同一の事業所で登録している場合は、上述した複数事業所にまたがって業務に従事する職員の扱いに準じ計算します。つまり、それぞれの業種をこなしている従業員は、それぞれの事業所で常勤とすることが出来ず、それそれの事業所で勤務時間を割り出し計算することになります。
※「接客や会計に従事している販売員さん」は、動物の飼養又は保管に従事する職員には含めることはできません。
・・・とここまで、動物取扱業が守るべきルールの
⑴飼養施設・設備(ケージ等)について
⑵従業員数について
⑶環境の管理について
⑷疾病等に係る措置について
⑸動物の管理について
の⑴と⑵のご説明をさせていただきました!
聞いてみて思ったのですが、大きな規模で動物取扱業を行う場合は、結構人員の配置に苦労する可能性もあるのかなあと思いました。
そうですよね!
動物の飼育は人気の求人ですが、結構体力の必要なお仕事ですし、人材の育成も大変な業務の一つです。
次回は、
⑶環境の管理について
⑷疾病等に係る措置について
⑸動物の管理について
のご説明をさせていただきます!