植田

今回は、外国人が経営管理ビザを取得するために必要な【事務所の確保】について、許可・不許可事例を交えて解説していきます。

事業所の確保について

出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令のうち経営管理について

申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。
二 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
三 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令というのは、簡単にいうと、どんな人に許可を与えるのかの基準とされているものです。

この省令の経営管理ビザの基準を見ると、まず、申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。が求められるというのです。

500万円の出資とか2人以上の従業員だとか、経営管理ビザの取得には満たさなければいけない要件がいくつかありますが、こうしてみると「事業所の確保」は絶対の要件なのが分かりますね。

許可・不許可事例

事例1:契約は住居か事業所か?

Aは、本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの、貸主との間で「会社の事務所」として使用することを認めるとする特約を交わされていた。

事業所が確保されていると認められた。

植田

解説:もともと日本に既にいて、他の在留資格をもっている外国人が、経営管理ビザに変更するときの、事務所の審査ですね。
契約していた物件が事業用ではなかったけど、大家さんが事務所としての利用をOKしてくれていたので、事業所として認められたケースです。
一般住居用の家賃で借りれているのかもしれません。費用を抑えることが出来て、とてもありがたいですね。


事例2:もう一つ事務所が用意されている場合

Bは、日本において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったところ、本店が役員自宅である一方、支社として商工会所有の物件を賃借していた。

事業所が確保されていると認められた。

植田

解説:経営管理ビザをこれから取得する外国人が会社の本店と支店を用意していたケースです。水産加工や水産物の輸出入となったら、比較的大きな加工場や、事務機器の設置は事業を行うために絶対必要と誰もが思うところではあります。
本店は役員の自宅でしかなかったので、本店だけでは認めらなかったかもしれませんね。

事例3:同じ建物内で住居と事務所がある

Cは、日本において株式会社を設立し、販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、会社事務所と住居部分の入り口は別となっており、事務所入り口には、会社名を表す標識が設置されていた。また、事務所にはパソコン、電話、事務机、コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認された。

事業所が確保されていると認められた。

植田

解説:経営管理ビザをこれから取得する外国人が自宅と事務所を同じ建物で用意していたケースかと思われます。本来自宅を事業所として申請すると、事業所の確保ができていないと判定されやすいのですが、今回のケースは自宅部分と事業所部分とではっきりと分離されていると認められたものかと思われます。

事例4:調査によって発覚した!

Dは日本において有限会社を設立し、当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが、事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ、郵便受け、玄関には事業所の所在を明らかにする標識等はなく、室内においても、事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず、従業員の給与簿・出勤簿も存在せず、室内には日常生活品が有るのみだった。

植田

解説:すでに経営管理ビザを取得している外国人経営者のケースです。
引き続き日本に滞在するために更新の申請をした際に入管が自宅の調査調査を行ったところ事業の実態が認められなかったというものです。
備品や事務機器はおろか、「従業員の給与簿・出勤簿も存在せず」という文言から、もし雇用に関しての情報も虚偽であったとしたら、脱税の可能性も調査されていまいそうです。

事例5:調査によって発覚した!2

Eは、日本において有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には社名を表す標識等はなかったもの。また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、あるのは家具等の一般日常生活を営む備品のみだった。

植田

解説:経営管理ビザを申請をした外国人のケースです。事業の実態を示すようなものがなく、自宅として認められるようなものだけが存在したということで事務所の確保は出来ていないと判断されました。


事例6:従業員の名義で大家さんの同意なし

Fは、日本において有限会社を設立し、設計会社を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、提出された資料から事業所が法人名義でも経営者の名義でもなく従業員名義であり同従業員の住居として使用されていたこと、当該施設の光熱費の支払いも同従業員名義であったこと及び当該物件を住居目的以外での使用することの貸主の同意が確認できなかった。

植田

解説:すでに日本に滞在している経営管理ビザ以外の外国人が、経営管理ビザを取得するために申請を行ったケースです。
「設計会社」とあるので、もしかしたら元々は「技人国」の在留資格だったかもしれません。
実態は従業員の自宅である物件を大家さんの許可もなく事務所として申請したもので事業所を確保しているとは認められませんでした。
事務所であることの根拠を示せない状態での申請は避けてくださいね。

まとめ・虚偽申請のリスク

虚偽の申告をして在留資格を取得すると、「虚偽申請」として在留資格を取得できなくなったりします。もし仮に取得できたとしても、取り消されたり、義務が発生した状態で仕事が出来なくなると、債務不履行などで損害賠償を請求されてしまうこともあります。

虚偽申請という結果を受ける人の多くは、こんなことになるとは知らなかった。この申請でダメだとは知らなかった。お金・時間がなく仕方なくせざるを得なかった。という方が大半でしょう。

しかし、知らなかったとはいえ虚偽申請は、大きな時間とお金をロスして、今後の人生を大きく狂わせてしまいます。ぜひ、在留資格取得の支援のプロである行政書士にご相談ください。